小笠原父島旅行者による、これから初めて小笠原父島に来る人の為の旅行手記(メモ)と父島独特の釣りである「泳ぎ釣り」にはまった記録。

父島旅行記2日目

父島旅行記2日目

まどろみのなかで

 8月1日

 目が覚めたのは早かった。
 恐らく、5時ごろだったように思う。

 まどろみの中で昔のことを思い出していた。

 お父さんが見えた。
 家族で伊豆にいったときのことを思い出していた。

 岩場の海で家族で泳いだ。

 水が綺麗で、生き物がたくさんいた。
 蟹とか、うつぼとか。

 すごく楽しかった。
 生き物のいる海でシュノーケルをするのが好きだ。

 お父さんが連れて行ってくれた。

 お父さんは精神的に子供っぽいところがあった。
 それを昔は責めもした。

 しかし、お父さんは子供っぽいながらも
 訳分からないながらも、
 なんとか育ててくれたんだなと、ふと思った。

 お父さんとお母さんはコミュニケーションがとれていなかった。
 両方とも精神的に未熟すぎた。

 お互いにお互いのことをどこかで責めていた。
 悲しいぐらい未熟だった。

 しかし、
 思い出してみると
 悲しいぐらい未熟でありながら、
 それでも一生懸命、僕や妹を育ててくれた。

 そのことを思い出していた。
 そしてまた、少し寝た。

 耳元で荷物を整理する音がやかましくて、また目が覚めた。
 みんな寝ているというのに
 一組のカップルがやたらと大きな音をたてて
 荷物を整理していた。

 腹がたった。

 うるさいんですけど、と言おうとしたが
 目をみて、話の通じる人に見えなかったので甲板にでた。

 日はすでに高くのぼっていた。

 船の周りをぐるりと回った。
 水平線しかなかった。

 おそらくはこの光景は心地よいはずなのだろうけど
 寝起きが悪く、ふてくされていた。

 しかし、海の風にふかれ、太陽にてらされる内に
 その邪気もどこかに飛んでいった。

とびうお

 ふと、きらっと光るものが海から飛び出て水平飛行した。
 その瞬間、鳥が急降下して水面すれすれで、その光るものを追い、
 それが海に落ちた瞬間、鳥も海に突っ込んでいった。

 トビウオだった。

 魚が空を飛ぶのをはじめて見た。
 本当に飛ぶ。
 案外よく飛ぶ。

 鳥が3、4羽、船と平行して飛んでいた。

 そして、トビウオが飛び出てきた瞬間、
 その鳥が急降下し、追いかける。

 見ていて面白かった。
 狩りだ。

 狩りってものが好きだ。
 野生と荒々しさ。

 研ぎ澄まされた感覚。

 やがて、島がいくつか見えてきた。
 そして、連なる小さな島の向こうに大きな島が見えた。

 父島。

 思ったより、遥かに大きい島だった。

 島はなだらかではなく、
 山が海の上につきでているという感じで
 ほとんどが崖のような感じ。

 それも砂のような山の崖の島だった。
 不思議な光景だった。

下船

 港につき、下船した。

 暑かった。
 1ヶ月前にいった石垣島と同じくらい暑かった。

 確か、緯度は同じくらいだったように思う。

 宿やダイビングショップの看板をもった人たちが
 下船客を出迎える。

 しかし、僕は宿の予約をしていないので
 出迎える人はいない。

 多少の心細さを感じながらも
 観光案内所に行き、宿を探す。

「宿を探しているんですが…」

「ご予算は?」

「予算はとくに上限はないんですが…
 海に入りたいんです。

 あとインターネットがつなげられるところがよくて。」

 なかなか、見つからなかった。
 まず、ネットがつながるところは
 宿としては、ほとんどない、とのこと。

 地図と、宿一覧が書かれた案内図をもらい
 直接、聞いてみてとのこと。

 しかし、ここではAUの携帯はつながらない。
 DOCOMOのみ、とのことだった。

 とても驚いた。

 PHSもつながらなかった。
 もってきたエアエッジのカードもこれでは役にたたない。

 早くもやばいなぁと思い始めていた。
 いきあたりばったりだからこそ出会う、思いがけない環境。

「この島ではインターネットつながるところはあるんでしょうか。」

「情報センターというのが最近できまして…。」

 聞くと、すぐ近くに情報センターというのがあり
 そこでなら、ネットができるとのこと。

 しかし、できることなら、宿からネットはしたいものだ。
 電話でいろいろ聞いたが、「小笠原ユースホステル」では
 ネットができることがわかった。

 3分20円。
 10年前のようだ。

 でもまぁ、ユースだったら、情報収集にもよいだろうということで
 すぐに決めた。

 ユースまでは港から歩きでいけた。
 大村という、港から近い集落があり、そこのはずれにあった。

 荷物を置き、レンタバイクを借りた。
 とりあえず、10日分借りた。7500円。

 50ccの原付である。

 後でわかったのだが、
 ここ小笠原の父島は島をバイクで廻ると30分ぐらいしかない。

 しかし、その30分の間の高低差が半端ではない。

 自転車も貸し出しているが、
 自転車で上がり下がりできる高低差ではない。

 小笠原に来るなら、レンタバイクを仕様することをおすすめする。

 しかし、このバイクもそれほど数があるわけではない。
 特に夏のシーズンはうまってしまうこともあるらしい。

 ユースにしても、僕が最後に一人で
 既に満室。

 未だに7日、8日の宿は決まっていない。

 いきあたりばったりもいいが
 やはりある程度の準備、予約はしたほうがいいかもしれない。

 宿に荷物をおいたら、同じ部屋の人が入ってきた。

「こんにちは。」と言うと、無視された。
 いきなり無視かよ、と思い、他の宿舎に泊まりたくなった。

 ロビーで「船が出る」「見送りに一緒に来ませんか」
 とユースのスタッフに言われる。

 なんで、そんなことせにゃならんのだと、思ったが
 郷に入れば郷に従うことにし、とりあえず行ってみた。

ユースの人々

 行く途中、宿泊者同士が妙に仲がよいことに気が付いた。
 僕もすぐに声をかけられた。

 港につくと、みんな写真をとったり、
 名残をおしんだり。

 やがて、東京に帰る人が船に乗ると
 島の人が大太鼓をならし、
 船のドラが鳴り響く。

 ちょっとした祭りだった。
 見送る人が手をふる。

 元宿泊者で船からこちらを見る人の中には
 ないている人までいる。

 たかだか、ユースにとまっただけで
 なんでそこまでいっちゃうのか不思議でしょうがなかった。

 いってらっしゃい、と言う。
 いや、ここは家なのか、とも思う。

 船が出ると、走っていて、海に飛び込む人までいる。

 それらを僕は冷めた目でみていた。
 勝手にやってもらうのはかまわないが、強要はしないで欲しいとか思っていた。

 祭りが終わり、ユースに戻る。
 戻り際、ダイビングのライセンスをとるコースに申し込みをするのに
 いくつかのダイビングショップに寄った。

 小笠原ダイビングセンターは、既にいっぱい。
 まぁ、通常はどこも一杯のはずだった。

 だめもとで聞いていたが、
 今からの申し込みでも大丈夫かもしれない、というダイビングショップを教えてもらう。

 ユースの近くにある、パパスというダイビングショップだった。
 そこへ行き、話をすると受け入れてもらえた。

 すぐに契約をし、支払いを済ます。
 79800円。

 最初、4日からという話であったが、無理を言って、2日から、
 つまりは翌日からのコースにしてもらえた。

 宿題として、3時間分のDVDを渡された。
 今日中にみておいて欲しいとのこと。

 無理を言ったからには、これぐらいの無理は仕方があるまい。
 幸い、パソコンをもってきていたので、DVDを見ることができた。

情報センター

 手続きをすませた後
 レンタバイクで情報センターなるところに行く。
 ちょっと分かりにくいところにあった。

 村からでて、坂をのぼり、左カーブの影で隠れた
 左に入る道の先。

 更にその先に二手にわかれるところがあるので
 その左側にあった。

 最初の曲がり角のときは標識があったが 
 ふたつめの曲がり角には標識がないため、一度間違えた。

 情報センターにたどりつくと、人がまばらにいた。
 受付の人に「ノートを使いたいんですけど」というと
 つないでくれた。

 すぐに起動し、確認したが、メールはつながった。
 早速、船の中で書き溜めたメールの返信を吐き出し、
 更にたまりたまったメールを受信した。

 そして、インターネットをみようとしたが、
 どうもつながらない。

 おかしいなと思って、となりのパソコンのインターネットオプションを開くと
 プロキシを使用していることが分かったので、
 自分のノートの設定を変えたらつながった。

 デールさんの携帯アフィリエイトのマニュアルは恐ろしくたくさん売れていた。
 値上げ直前、「ある一線」を超えると爆発的に売れる瞬間がある。

 うまく、波にのったようだった。

 夕飯を食べるためにユースに戻る。
 食事は安いにも関わらず結構おいしかった。

 食事中、目の前に平井堅に似た男がいた。
 顔だけでなく、しゃべりも同じだった。

「弟さん?平井さんの。」

「いや、違います。」

 話を聞くと、高校の社会の教師。
 和歌山の人だった。

 1年に1回は旅にでないと、たまる。

 どうも気があいそうだった。

 20時から、ユースのスタッフ主催でミーティングが開かれた。
 お互いの自己紹介と、島の名所案内。

 妙に和んだ。
 ユースの室長は、ここの生まれ。

 最初は不便だとばかり思い、東京に行ったが
 向こうに行き、ここのよさを実感したとのこと。

 その言葉に重みがあった。

 ここのユースは確かに何かを与えている。
 いろんなユースをみてきたが、こういうユースはなかなかなかった。

 海が好きで、海を見に来たことが共通していた。

 ダイビングに来ている人も多かったが、
 素もぐりにきている人も結構いた。

 機材を一切使わず、息をとめてもぐるすもぐり。
 なるほど、それもいかにも面白そうだ。

 ダイビングがひと段落したら、素もぐりに挑戦してみよう。

 その後、平井堅と他、当日到着組みの野郎数名と
 ビールと枝豆でこれからの旅の計画などを話した。

 早めに切り上げ、僕はDVDをみなくてはいけなかった。

 DVDを見ながら、すぐに眠くなってしまった。
 やはり、予定を決めない旅というのは、思いのほかエネルギーを使う。

 2段ベットの上で泥のように寝た。

父島旅行記

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