父島旅行記5日目
父島旅行記5日目
天の川の夢
8月4日。
4日目の明け方。
夢をみた。
夜空の下で僕は星を見上げている。
あきれるほどたくさんの星空。
天の川。
見たこともないような、見事な星空だった。
目が覚めてから、
この島に来て、一度も星空を眺めていないことに気がついた。
朝食時、顔見知りになった人で
東京に帰ったらマイクロソフトに就職が決まっている人がいて
その人にその話をしたら、
昨晩の星空はとんでもなく綺麗だった、とのことだった。
もしかして、と思い
「天の川は見えた?」と聞いた。
「はっきり見えたよ。」
と聞いた。
あの夢は本当に夢だったのだろうか。
夢にしては、あまりにも現実感があった。
Cカード
朝食を済ませ、ダイビングショップへ。
本当は4日かかるダイビングの講習も
進度が速いとのことで
3日で終わらせ、4日目はボートダイビングの講習となった。
つまり、今日の講習を終わらせれば
オープンウォーターダイブのCカードライセンスが取得できる。
その日の講習は若い漁師ふたりと、
昨日の同い年ぐらいの女のインストラクターさんとだった。
若い漁師さんふたりは
すでに前に、講習を終わらせてるらしく、
今日でライセンスが取得できる日のようだった。
ひとりは笑顔がおもしろく見てるだけで心が和んだ。
もうひとりは物静かで無口だが、どっしりとした存在感があり
みていてどことなく面白かった。
いつも講習している浜に行く。
今日することの1日の流れを聞き、
ウエットスーツは着ずに、シュノーケルと水中めがね、足ひれだけで海に入る。
最初、スキンダイビングといって、
深く潜る練習をした。
ダイビングを練習してきたせいか、
簡単に息抜きができるようになっていて、スムースだった。
また、シュノーケルだとダイビングの空気を吸う泡がない分
視界がはっきりして、よく見える。
インストラクターさんがデモンストレーションをし
一人づつ、やってみる。
漁師二人はさすがにいつも海と接しているだけに
もぐるのがうまい。
全く緊張などしていない。
僕は最初はとにかくスピードばかり気にしていて
一気に入って、一気にあがっていた。
しかし、二人が海に馴染んで素もぐりをしている姿をみて
見習いたいと思い、二回目に真似をしてみた。
今度はずいぶん、静かに入れた。
・・・思えば、いつも速く作業することばかり気にしてた。
速く速くとせかされているような感覚がいつもあった。
速く作業できる、仕事ができる、計算ができることがいいことで
ゆっくりすることはいけないことだと思っていた。
ゆっくりすると、怒られると思っている。
だから、自分の体にむちを打って、速く作業をしないといけない、と
思っていた。
いつからだろう。
なんでだろう。
速く作業をする。
考えてはいけない。
反射的に動かなくてはいけない。
感情をもってはいけない。
疑問をもってはいけない。
なんで、そんなことを
繰り返し、自分に命令し続けているんだろう。
思い出す限り、最初のそれは学習塾だ。
何度も何度も、繰り返し行われる計算問題、漢字の練習。
それをたくさんたくさん。
「速く正確に」を訓練させられる。
そう、訓練。
あれは教育ではなく、訓練だった。
調教だった。
その環境に長くいたがゆえに
いつも自分を追い立てて
速い作業をしていないと、
落ち着くことができない姿に成り果ててしまっている。
そんな自分が浮き彫りになって見えた。
水の中で水中マスクをはずして、
目をあけて、海を泳ぐ練習。
方位磁石を使って、ひとつの方向に向かって泳ぐ練習などをした。
講習をおえて、午前中の最後に海中ツアーをした。
3日目だからなのか、ずいぶんと呼吸がラクになっていることに気づいた。
少しづつ、体がなれていっているようだ。
体験ダイビングのときは、何度やってもうまくいかなかった耳抜きが
かなりスムースにできるようになりつつあった。
インストラクターさんは
僕が覚えるのを速いとほめてくれる。
しかし、それは見守ってくれる人があってこそ。
インストラクターさんは
やることをひとつづつ、
説明してくれ
やってみせてくれ
やらせてみせてくれ
できたら、褒めてくれる。
ここまでしてくれて
やっとできるようになる。
教育というのは、それぐらい手間がかかる。
ありがたかった。
午前の講習を終えると、午後の講習が始まるまでは
少しの休み時間がもうけられた。
理由は今日は3日に1度の東京行きの船の出向日。
見送り
ここ父島では、
船が着く時、そして船が出発する時、
島民全員といっても過言ではないほどで
出迎えたり、見送ったりする。
僕はユースの人たちと一緒に
ユースから東京に帰る人たちを見送る。
不思議な感覚だった。
3日前は、不思議でしょうがなかった、あの暖かい雰囲気。
それが、今では
いくばくか自然なことのように感じていた。
ドラがなり、太鼓が叩かれる。
船が出発する。
船が港を出ようとする瞬間、
僕はユースの人たちと一緒に防波堤に水着いっちょで立っていた。
そして、合図とともに、いっせいに船のほうに向かって
飛び込む。
面白かった。
なんともいえない、ぞくぞくした感じがあった。
ちょっと、懐かしくもあった。
アイルランドでフランスから来た音楽学校の学生グレゴアラたちと
分かれる時のような。
昼食をとって、ダイビングショップに集合。
そして、Cカードをとるための最後の実習を受ける。
中性浮力の取り方、浮上の仕方など
デモンストレーションなしで、やらなければならない。
しかし、それらもインストラクターさんの
丁寧な教え方のおかげで
なんなくクリアすることができた。
実習が終わる時、5時の鐘がなった。
まだ暖かい。
ここは常夏の島のよう。
これで終わるんだな、と思った。
インストラクターさんに、こうやって丁寧に教えてもらうことも
もうないんだな、と思うと寂しかった。
ダイビングショップに戻り、
カードの発行手続きをし、証書をもらう。
インストラクターさんにお礼を言い
すぐにユースに戻り、
夕食をとり、新しく東京から来た人たちの歓迎ミーティング。
父島旅行記
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